茜子の日記

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Before Trilogy : ビフォア3部作について

物凄い映画体験をした。映画を見てこんなに心が動いたのはとても久しぶりだったので、この気持ちを文章にちゃんと残そうと思う。

 

海外の友達がインスタに長文のレビューを載せていたのを思い出し、思いつきで見始めた”ビフォアシリーズ”。18年間にも及ぶ壮大な3部作であることも知らずに2作目のサンセットから見てしまい、10分観たところで「おかしい」と気付いて検索。サンライズが一作目だった。

 

 

1.ビフォアサンライズ

 

3作通して観賞した結果、サンライズが抜群に好きだし、ジェシーセリーヌが歩んでいく人生を知った後にもう一度サンライズを見ると、最初の出会いのシーンは痺れる。電流が走るような鮮烈な出会い、この瞬間の二人はこれから歩むことになる二人の人生を想像もしていなかっただろうなと。

 

 

1995年公開の作品。簡単に話すとユートリアの汽車で出会ったフランス人女性とアメリカ人の青年が様々な会話をしながら一夜を過ごすという話。

 

祖母の家から帰る途中のフランス人セリーヌは隣の席の夫婦の喧嘩に嫌気がさして、席を移る。

その時に偶然隣にいたのがヨーロッパに旅行に来ていたアメリカ人のジェシー

 

二人はその夫婦の喧嘩によって目が合い、話を始める。(ここが重要!)

そこから二人は自分自身の話はもちろん、教養、哲学、宗教など豊富な知識量で休む暇もなく話し続け、ジェシーが飛行機に乗るため降りるウィーンで「君ともっと話たい。一緒に降りよう。」と説得し、二人は美しい街ウィーンで共に時間を過ごすことになる。

 

1994年の夏、セリーヌ役のジュリー・テルピー、ジェシー役のイーサン・ホーク共に24〜25歳だがビジュアルがまさにレジェンド。透明感溢れる天使のようなセリーヌと色っぽくキュートなジェシーはまさにこの時期の二人にしかできなかったであろう。

 

特にイーサン・ホークの演技力には驚く。

ジェシーの少し照れっぽいところ、プレイボーイのくせに本命を目の前にしてタジタジしてしまうところ、隠そうとはするもののセリーヌにゾッコンなところ………微妙な目の動きや仕草、表情でちゃんと伝えてくる。

 

以下、 ちょっと細かいけどジェシーという青年がどんな人なのかよく現れていると思う仕草。私がすごく好きな演技。めちゃくちゃかっこいいのに案外普通の男の子でしんどい(しんどい)

 

一旦降りようとするが戻ってきてセリーヌを説得するジェシー、Come onと少しちょけながら誘うところ。

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※列車を降りる時に寝てもいいと決めていたと後々打ち明けるセリーヌ、実際に列車を降りる直前で一瞬止まって少し微笑む。この時に決心したのだなと分かるシーン。

 

ウィーンを降りてすぐに向かった橋で、気まずくて決まり悪そうに話すジェシー

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レコードショップの試聴室で目を避けながらニヤつくジェシー

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観覧車の中でセリーヌにキスがしたいのに自分からは勇気が出ずにタジタジ、セリーヌが「キスしたいの?」と聞くとイェスイェスと大きく頷きくところ。

오스트리아 비엔나 여행 # 프라터 놀이공원 관람차 (영화 비포선라이즈 촬영지) : 네이버 블로그

 

 

川辺を歩きながらセリーヌの手を見つめるところ。

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 夜が明けて朝が来てしまい、別れの時が近づいている時に演劇を見に行かなかったと話すジェシー、どうでもいい話をしながらセリーヌを見つめるけど別れが近づいていることを信じたくないような表情。

비포 선라이즈> 사랑, 가장 눈부신 순간

 

 

とにかくジェシーセリーヌにゾッコンで、大切にするあまり奥手になってしまっているのが可愛いすぎる。それを演じるイーサン・ホーク分かってる!!!!

 

二人の話す内容は、日本の若者だと全く成立しない内容だなと思う。もしこれが日本人だという設定だったら、自分と自分の周りの話だけして終わりなんだろうなと。これだけのことを話せる知識量と、教養は持ち備えていない、、、羨ましい!

 

最後に駅で別れを告げる時に、どうしたらいいのか分からなくて息が上がってしまっている二人。言葉もままならないまま勢いよくキスをする。(観ている私も😭😭😭←こんな顔)

 

列車に乗って家に向かうセリーヌ、バスに乗って空港へ向かうジェシー。朝の光を浴び、二人とも微笑みながら終わって行ったのがとてもよかった。一生忘れられない夏の思い出。

Summer '94、Living life 人生は続いていく。生きるのみ。 

 

二人が1994年の12月16日に出会えても出会えなくてもどちらでもいい素晴らしい終わり方だと思った。でもこのビフォアシリーズが素晴らしいのは、9年後に同じキャストで、現実と同じ時間の流れで後続作を残しているというところ。セリーヌジェシーの物語は夕日が美しい9年後のパリへと続く。

 

 

 

 

2.ビフォアサンセット

 

9年後のパリ。ジェシーは小説家となってヨーロッパをPRツアー中。セリーヌとの出会いを基にした小説を出版していた。サイン会で突如現れたセリーヌ。二人は9年ぶりの再会を果たす。そう、二人は12月16日に出会えていなかった。

 

でもジェシーは飛行機の時間が迫っている。今回二人に与えられた時間は85分。

 

変わらないようで変わった二人。9年という重み、二人の顔のシワが物語っている。

12月16日のこと、その後の9年間のことは二人の話からのみ伝えられるが、どのような生活を送っていたのか情景が伝わってくる。9年前とは確実に違う、二人の落ち着き。

 

あの時と同じように、二人は幅広い分野の話を休みなく続ける。お互いの過ぎた9年間のことを。

「12月16日に会えなくて悲しかったけど、今日再会できたから悲しい思い出じゃなくなったわ」「思い出は永遠に変えていけるさ」というセリフがとてもよかった。過去の記憶を変えるのも現在、または未来の自分なんだなと。

 

結婚生活がうまく行っていないジェシーの「なんでウィーンに来なかったんだ。再会できていたら人生変わっていたよ」と、セリーヌの「恋する気持ちをあの夜に置いてきてしまった」というセリフに泣いてしまった。お互いが大好きだけど、あの頃は若かったから、一夜限りの関係だったから、現実的に難しいからと決めつけてしまうがために(特にセリーヌが)心を開いて関係をまたスタートさせることができない。二人の道が止まってしまっているようにも感じられた。時の流れ、人間の成長、世の中の不条理を思わされた。

 

船に乗ってパリを一周する二人。「ノートルダム大聖堂もいつか消えるかもしれない。だって大昔はそこに違う教会が建っていたのだから」というセリフの凄さ、2004年公開の作品だが、2019年にノートルダム大聖堂に火災で消失するなんて。(改めて、良い作品は社会を観察する力から未来の可能性を予知することがうまいなと思う。)

 

영화 <비포 선셋> 속 노트르담 대성당 | 보그 코리아 (Vogue Korea)

 

 

どうにかしてセリーヌとの時間を伸ばそうとするジェシーセリーヌの家でティーを飲んで踊るセリーヌを見つめる。

Baby, You are going to miss that plane.
- I know.  

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ここで2作目、ビフォアサンセットが幕を閉じる。(最高な終わり方…)

若くて強烈で熱かった刹那、Summer '94から考えると、ジェシーセリーヌは確実に大人になっていた。なってしまっていた。

 

 

3.ビフォアミッドナイト

 

舞台は9年後のギリシャ

9年前のパリでの再会後、ジェシーは飛行機に乗らなかった。愛しのセリーヌが目の前で踊っているのに、当たり前だ。あのまま帰れるわけがない。

 

今回の作品が今までと確実に違うのは登場人物の多さ。今までの2作品はジェシーセリーヌの二人だけの恋の物語だったならば今回は二人だけじゃなく、多くの人物との関わりが加わった「家族」「愛」の物語。

 

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二人は9年を一緒に生活しながら子供、共通の知り合いなど、ごく普通の夫婦、家族の形を作り上げていた。今までの幻想的な熱い恋とは違う、現実的な愛だ。もう夢物語ではなくなった。

二人は美しいギリシャの避暑地を散歩する。お喋りなのは9年経っても変わらない。

 

子供を預けて二人だけの熱い夜を過ごすつもりが、会話の中のすれ違いで喧嘩が勃発、二人はヒートアップし続け熱い夜を過ごすはずが熱い喧嘩をすることに。

 

作品を通してお喋りで知識人の二人であることは十分に分かっていたし、二人がもし口喧嘩を始めたら物凄いことになるだろうなと思ってはいたが、本当に物凄かった………

 

この作品は主演の二人、イーサン・ホークとジュリー・テルピーが監督と共に脚本を手掛けているため、演じる本人達の「ジェシーならこう言うだろう」「セリーヌならこう言うだろう」を凝縮させたまさにホンモノの脚本。あまりにもリアルな喧嘩だ。

 

二人の喧嘩は結局落ち着くことはなく、セリーヌは「もう終わりよ」とホテルの部屋から出て行ってしまう。

 

少し時間が経って、落ち着きを取り戻してセリーヌを追いかけるジェシーセリーヌを説得する手紙があまりにも良すぎた。

「僕は未来の人間だ。今日の夜中、二人はギリシャで一生忘れられない熱い夜を過ごす。」 

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相手にしないセリーヌだったが、ジェシーは「完璧じゃないけど、これは真実の愛だ。これが分からないならもう僕たちは終わりだ」と伝えると、セリーヌにもその愛は伝わった。

 

この流れがとても素敵な理由が、ジェシーセリーヌが出会った1994年の夏、ウィーンの列車の中でのジェシー口説き文句は「これはタイムトラベルだ。将来結婚して子供ができて人生に疲れた時、あの時一夜を過ごしたあの男を選んでいたらどうなっていただろう・・・と想いにふけるために、今日一緒に遊ぼう」だった。 

ジェシーはいつだって未来から逆算して現在の選択をする。未来の自分、その後についてしっかり考えられる人。その姿がすごくロマンチックでもあり、素敵な考え方だと思った。今回のミッドナイトでも、セリーヌとの未来を想像して、逆算して仲直りを選んだ。

 

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1994年の夏のことを想うと、今でも胸が苦しくなる。ジェシーセリーヌは一夜限りの関係ではなく、人生を共にすることを選んだが、それは今回のような喧嘩やすれ違い、周りの環境にも影響されながら二人の関係性が変わる可能性があることを意味する。

 

それでも二人は熱い夏の出会いを一生胸に抱きながら生きていける。あんなロマンチックで素敵な思い出を共有しているという事実が、どんな困難があってもこれからも二人を良い方向に導いてくれるだろうと思った。

 

Summer '94の列車の中で二人が言葉を交わしたきっかけは、ありふれた夫婦のありふれた喧嘩だった。実際に夫婦になった二人の夫婦喧嘩をこのミッドナイトに持ってきたことに深い意味を感じた。二人に出会いをもたらしたあの夫婦は、あの後どんな未来を作っていったのだろうかと考えてみる。

 

 

最後に・・・

息が詰まるような熱いウィーンの夜明けから後悔と祈りのパリでの夕焼け、真実の愛にたどり着いたギリシャの夜中まで。ジェシーセリーヌの二人の時間を描いた3部作を通して、とてつもない映画体験をすることができた。人と出会うこと、共にするということ、愛することを、ロマンチックな演出と素晴らしい脚本で映画として残してくれたこと、見ている人がこんなにも共感できるほどに18年以上に渡って演じてくれたイーサンとジュリーにもとても感謝する。ジェシーセリーヌが共にした全ての瞬間を愛している。